目次へ

 珪藻綱 BACILLARIOPHYCEAE 

 珪藻綱は,黄色鞭毛藻綱黄緑色藻綱とともに,黄藻植物門という1つの門にまとめられることが多いようですが,独立した門として扱われることもあるようです。単細胞の藻類で,葉緑体の色は,褐色,黄褐色,黄緑色などが多いようです。細胞壁は,珪酸化合物が沈着して硬い被殻になっていて,ここから珪藻の名がつけられています。

 このグループの細胞壁は独特の構造をしています。細胞壁は上殻と下殻の2枚の被殻から構成されていて,それがちょうど箱のふたと実のように,下殻が上殻にはめこまれています。また,細胞分裂も独特のかたちをとります。図1はスリレラ属 Surirella の細胞分裂途中の写真です。赤矢印で示したところは,母細胞の上殻と下殻のさかいめで,これをみれば箱のふたと実の構造がわかると思います。両方の殻はまもなく分離します。青矢印で示したものは,母細胞の上殻(上)および下殻(下)で,それぞれの内側に新しい殻(緑矢印)ができます。したがって,母細胞の両殻が,新たにできる娘細胞の上殻になり,新たに下殻が新生されることになります。すると,下殻からできた娘細胞は,分裂を繰り返すとだんだん小さくなっていくように思えますが,「珪藻の生物学」(東京大学出版会)によると,そうではないとのことです。細胞分裂の他に有性生殖も行い,そのときには増大胞子を形成します。

 図2は簡単ですが,珪藻の被殻の構造を模式的に示したものです。箱のふたと実の構造がわかると思います。箱の上下の面を殻面,横の面を殻環面とよびます。珪藻は,被殻に微細な彫刻模様があり,それによって分類されます。特に,羽状目に属するものでは,殻面の模様が重要になるものが多くあります。しかし,その模様がきわめて微細でわかりにくく,分類は簡単ではありません。細胞内容物があると模様が観察しにくいので,酸処理という方法で内容物を除去(クリーニング)して観察することが必要ですが,ここでは行っていません。したがって,種の同定がほとんどできていない属がほとんどです。酸処理の具体的な方法については生物実験の教科書などを参考にして下さい。
なお,パイプ洗浄剤法によりクリーニングした被殻の写真をいくつかのせました。ただし,珪藻の同定はあまり信頼のおけるものではありません。被殻写真は一部を除き,75pixelで10μmです。

 珪藻は,淡水にも海洋にも極めて多くの種類があり,しかも非常に量が多く出現します。特に海洋では種類数は膨大で量も多く,植物プランクトンの中核をなすといってよいでしょう。海洋の1次生産のなかで最も重要な役割を果たし,生態学や水産学の面からも極めて重要なグループです。淡水では,種類数は海洋より少ないようですが,重要度は海洋といささかもかわりがありません。植物プランクトンとしては,緑藻と並び重要です。また,付着藻類として出現するものも多く,アユの餌として知られる水ゴケ(水アカ)は,主に珪藻からなっています。淡水では純粋の浮遊種(プランクトン)とよべるものは案外少なく,ここでのせている写真の中にも,川の石の表面などから採集したものがかなり含まれています。なお,ノーベルのダイナマイトの話で有名な珪藻土は,海底や湖底に堆積した珪藻の遺骸が化石化したものです。
 
 このグループは中心目 Centrales と羽状目 Pennales の2つに分けられます。おおまかにいえば,中心目のものは殻面(殻を上から見た面)が放射相称,羽状目のものは殻面が左右相称です。ただし,殻の形は非常に多彩で,必ずしも全部があてはまるわけではありません。淡水では,中心目に属するものはあまり種類が多くなく,羽状目に属する種が圧倒的に多いため,ここでは羽状目のみ科ごとに分けて記述することにします。

中心目 Centrales

羽状目 Pennales
 フラギラリア(オビケイソウ)科 Fragilariaceae
 ユーノティア科 Eunotiaceae
 アクナンテス科 Achnanthaceae
 ナビクラ(フナガタケイソウ)科 Naviculaceae
 ゴンフォキンベラ科 Gomphocymbellaceae
 エピテミア科 Epithemiaceae
 ニッチア科 Nitzschiaceae
 スリレラ(コバンケイソウ)科 Surirellaceae

珪藻綱写真検索(表示に時間がかかります)

淡水珪藻画像集に,もう少し多くの画像があります。ご覧いただければ幸いに存じます。

目次へ