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 羽状目 Pennales 

 羽状目は,原則として殻面は左右相称で,殻面の形は楕円形や菱形が多いのですが,そうでないものもあります。淡水産の珪藻の大半はこの目に含まれます。このグループは殻面の縦溝の有無および状態によって分けられます。また,殻面の模様に関するいろいろな用語が出てきますので,まずそれについて述べておきます。

 図1はピヌラリア属 Pinnularia の殻面を示したものです。中央に縦線がみえますが,これが縦溝です。縦溝は中央を縦に走るものが多いのですが,スリレラ科 Surirellaceae などは特殊な構造をしています。殻面周縁部に多数の横線があり,切頂紋,横条線などどよばれています。この切頂紋の状態や数が,しばしば種の同定に重要になります。縦溝のまわりの切頂紋のないところは中軸区とよばれます。縦溝を持つ種は,縦溝が接地していると滑走運動を行うことができます。縦溝の部分はプロトプラストが外界と接しており,このことが滑走運動に重要とのことです。

 図2はシネドラ属 Synedra の殻面を示したものです。この属は縦溝をもちません。偽縦溝とは,単に中央の切頂紋がない部分をさしているにすぎず,特別な構造はありません。ちょうど図1の中軸区にあたるものだとみればよいと思います。したがって偽縦溝では滑走運動を行うことができません。

 羽状目は縦溝の有無および形状によって,無縦溝亜目 Araphidineae ,痕跡縦溝亜目 Raphidioidineae ,単殻縦溝亜目 Monoraphidineae ,および両殻縦溝亜目 Biraphidineae に分けられます。無縦溝亜目は,上殻,下殻両方ともに縦溝がなく,偽縦溝があるだけです。フラギラリア科 Fragilariaceae がこのグループに含まれます。痕跡縦溝亜目は,極結節の付近に短い縦溝があります。ユーノティア科 Eunotiaceae がこのグループに含まれます。単殻縦溝亜目は,一方の殻に完全な縦溝があり,もう一方の殻には縦溝がなく,偽縦溝のみです。アクナンテス科 Achnanthaceae がこのグループに含まれます。両殻縦溝亜目は,両方の殻に完全な縦溝があります。縦溝の形状および殻面の形により,いくつかの科に分けられますが,淡水ではナビクラ科 Naviculaceae ,ゴンフォキムベラ科 Gomphocymbellaceae ,エピテミア科 Epithemiaceae ,ニッチア科 Nitzschiaceae ,およびスリレラ科 Surirellaceae の5つの科があります。なお,ここでは属が不明のものがいくつかあります。
 羽状目の種の同定には,殻面の模様が重要です。特に,切頂紋の数,方向,長さ,状態(線紋か点紋か)などがしばしば重要になりますが,非常に微弱でよくわからないことが多く,殻面の模様を観察するためには,標本の酸処理や電子顕微鏡による観察などが必要です。ここではこれらの作業は行っていないため,種の同定がほとんどできていない属が多数あります。なお,細胞の長さは,殻面の長軸の長さで示します。

フラギラリア(オビケイソウ)科 Fragilariaceae

ユーノティア科 Eunotiaceae

アクナンテス科 Achnanthaceae

ナビクラ(フナガタケイソウ)科 Naviculaceae

ゴンフォキンベラ科 Gomphocymbellaceae

エピテミア科 Epithemiaceae

ニッチア科 Nitzschiaceae

スリレラ(コバンケイソウ)科 Surirellaceae

属不明

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