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 カラヌス目 Calanoida 

 カラヌス目は,第1触角が長く,第5胸節が頭胸部に含まれます。ヒゲナガケンミジンコとよばれることもありますが,あまり使われず,カラヌスとよばれることが多いようです。海洋では種類数は非常に多いのですが,淡水では種類数は多くありません。しかし,出現頻度と出現量は淡水,海洋ともに多く,動物プランクトンとして最も重要なグループの1つです。淡水プランクトンの中では大形で目立つグループです。急激な移動と静止を繰り返しながら遊泳します。静止する際には第1触角をまっすぐ横に伸ばし,浮遊に役立てます。
 淡水産のものは,日本ではほとんどすべてディアプトムス科 Diaptomidae に属します。左の図1および図2は,Sinodiaptomus valkanovi の全形を写したものです。図1が雄,図2が雌です。ディアプトムス科は,雄の右側第1触角(図1の赤矢印)が太くなり,種によって特徴的な形態になるため,この触角の観察が重要になります。(この触角は,雌に精莢(せいきょう)を受け渡す際に雌の体を保持するために使われるらしいのですが,くわしいことは知りません。)図2は雌です。雌の触角は変形せず,左右同じ形です。しばしば卵(図2赤矢印の黒い粒)や,精莢(少しわかりにくいのですが,図2の青矢印の莢形のもの)を携帯します。精莢は,精子が入ったカプセルで,雄から受け取ります。雌は,精莢から少しづつ精子を取り出し受精するため,長期間産卵することができます。なお,雄の第1触角および第5脚(後出)は,左右非対称ですが,ここでの左右とは,あくまでも動物体自身の左右のことです。したがって,背面から見たときには,左右は見た目と同じですが,腹面から見たときには,見た目と左右逆になりますので注意が必要です。図1および図2の緑矢印は第5脚です。
 図3は Eodiaptomus japonicus の雄の第5脚です。ディアプトムス科は,雄の第5脚が左右非対称になります。また,種によって特徴的な形態を示すため,種の同定には雄の第5脚の観察が最も重要になります。特に,第5脚右側の形態が重要です。第5脚右外肢は普通4節に分かれ,上から第1基節,第2基節(図3の緑字の1,2),第1節,第2節(図3の黄字の1,2)です。また,第2基節先端から内肢(図3の赤字のa)が出ています。右外肢先端からは長大な剣状突起(図3の青矢印)が出ています。また,第2節からはもう1本刺状突起(外縁刺:図3の赤矢印)が出ており,この刺状突起の生じる位置と突起の長さが同定には特に重要になります。(この第5脚も,雌に精莢を受け渡す際に使われるらしいのですが,くわしいことは知りません。)なお,雌の第5脚は左右対称です。くわしくは,それぞれの種の説明のところをご覧になって下さい。なお,第5脚は頭胸部の腹面後端にあります。図1および図2の緑矢印のところです。
 「日本淡水動物プランクトン検索図説」(東海大学出版会)によれば,日本では,ディアプトムス科に属するものは12種見つかっているとのことですが(今はもっと増えているかもしれません),ここでとりあげたものはわずかに3種のみです。しかも,そのなかで,Sinodiaptomus valkanovi は,私は2回しか見たことがなく,Acanthodiaptomus pacificus は山間の沼でしか見ていません。したがって,普通に見られるのは Eodiaptomus japonicus だけということになります。ディアプトムス科には,北方系や南方系の種が多く,広範に分布する種はあまりないようです。したがって,山形県でみられるディアプトムス科の種数は少ないのではないかと思われます。よくみられるものとしては,エオディアプトムス属 Eodiaptomus があげられますが,これはあくまでも山形県内で私が見た範囲での話で,他の地方ではよく見られるものが違ってくる可能性が大であろうと思われます。があるものが多く出現する属です。

   ・アカントディアプトムス属 Acanthodiaptomus 
   ・シノディアプトムス属 Sinodiaptomus
 ・エオディアプトムス属 Eodiaptomus

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