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 橈脚亜綱 COPEPODA 

 橈脚(とうきゃく,じょうきゃく)亜綱は,一般にケンミジンコとよばれ,淡水,海洋ともに動物プランクトンとして最も重要なグループの1つです。橈とはあまり見かけない漢字ですが,舟をこぐ櫂(かい),すなわちオールのことです。したがってこのグループは,かいあし類ともよばれます。このグループは,変態を行い,卵から孵化するとまずノープリウス幼生 nauplius になり,次いでコペポディド幼生 copepodid になり,最後に成体になります。淡水プランクトンの中では大形で,肉眼でもはっきり確認できます。急激な移動と静止を繰り返して遊泳します。静止するときは触角を横に伸ばします。
 図1は,簡単ですが自由生活をするケンミジンコの体制を示したものです(寄生性のものは変形しているものが多い)。体は概ね円筒形で,頭胸部と腹部(体後部)に分かれます(不明瞭なものも多い)。触角が2対あり,そのうち第1触角のほうが長くなっています(例外もあります)。頭端に眼が1つありますが,地下水産種では退化しているものもあります。体の後端は2叉状になっており,尾叉または叉肢とよばれます。この尾叉の形態は,特にキクロプス目において同定の重要なポイントの1つになります。なお,キクロプス科の種の同定についてのところも参照して下さい。
 図2はカラヌス目の遊泳脚の1つを写したものです。脚の先端がオール状になっており,遊泳に適した形になっているのがわかると思います。脚は基部に近いところから2つに分かれています。自由生活種の脚はみなこれと同じような形です。この遊泳脚は4対あります。そのほかにもう1対脚があり(第5脚),この第5脚の形態が種の同定には決定的に重要です。
 橈脚亜綱は普通7目に分けられます。そのうち3目(ホヤノシラミ目,ウオジラミ目,ナガクビムシ目)は全て寄生性です。寄生性の種は著しく体が変形しているものが多く,ほとんどケンミジンコの仲間だとはわからないものも多くあります。淡水ではイカリムシが有名で,キンギョやコイなどの養魚池の大害虫として恐れられています。また,1目(モンストリラ目)は,成体のみ自由生活で,全て海洋産です。残りの3目(カラヌス目,キクロプス目,ハルパクティクス目)が淡水プランクトンとして出現します。このなかでハルパクティクス目 Harpacticoida は底生性で,プランクトンとしてはあまり重要ではないのですが,カラヌス目 Calanoida とキクロプス目 Cyclopoida は淡水プランクトンとして最も重要なグループの1つです。図3に3目の大まかな形態(背面から見た図)を示しています。カラヌス目は,第1触角が長く,第5胸節が頭胸部に含まれます。キクロプス目は,第1触角がやや短く,第5胸節が腹部に含まれます。ハルパクティクス目は,第1触角が著しく短く,体全体が円筒状で,頭胸部と腹部の区別がはっきりしません(ただし,例外があります)。ここまで,すなわち目レベルの同定はすぐにできます。ところが,ここから先の同定は楽ではありません。どれもみな外形が似た種ばかりで,ちょっと見ただけでは全く区別がつきません。種の同定にためにはいろいろなポイントをくわしく観察しなければならず,非常に面倒な作業になります。したがってケンミジンコの同定は最も難しいと書いてある本が多くあります。(ミジンコはほとんどの種に和名が付いているのに対し,ケンミジンコには全く和名がない(和名を付けている本もありますが,広く使われているとはいえないようです。)のも,種の同定が面倒なためではないかと思うのですが,ほんとうのところはどうなのでしょうか。)しかし,淡水産の種に限っていえば,種類数が少なく,また区別点が明瞭なものがほとんどで,ある意味では最も同定が容易なものということができます。このホームページでは,ハルパクティクス目は難しいので同定は全くできていませんが,カラヌス目とキクロプス目の同定はきっちりできています。このホームページにおける同定には怪しげで間違いかもしれないものが多いのですが,カラヌス目とキクロプス目の同定に限っては自信がもてます(といいながら1つ間違ってしまいました。ユーキクロプス属 Eucyclops のところを見てください)。なお,外形が全部似ていて同定が面倒なのは橈脚類ばかりでなく,他の甲殻類でも多くみられます。特に小形の甲殻類に多いようです。また,おなじみのクルマエビ科(クルマエビ,ウシエビ(ブラックタイガー),タイショウエビ,クマエビなど食用としておなじみの種が多い)でも外形は全部似ており,もし色や模様が全く同じだったら同定は結構難しくなるはずです。

 橈脚亜綱すなわちケンミジンコ類は,海洋,淡水いずれにおいても動物プランクトンとして最も重要なグループの1つです。特にカラヌス目とキクロプス目が重要になります。このうち,海洋においては種類数,量ともに非常に多く,魚類の餌料として最も重要です。淡水においては種類数は海洋に比べると非常に少ないのですが,量は多く,もっとも普通に出現します。また,ミジンコにはやや劣るものの,魚類の餌料として重要であることは間違いありません。ここでは,橈脚亜綱を目ごとに記述することにします。また,別に幼生を1まとめにして記述します。なお,ここでは,体長は頭端から尾叉の後端までの長さで示し,触角および尾叉刺毛は除きます。また,体色は甲殻の色です。

カラヌス目 Calanoida

キクロプス目 Cyclopoida

ハルパクティクス目 Harpacticoida 

橈脚亜綱幼生

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