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その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10

名前調べのコツ

淡水の小さな生物の名前を調べるにあたっては,いくつかコツや注意すべき点があります。そのいくつかを記します。なお,このことは淡水の小さな生物に限らず,他の生物の名前を調べるにあたっても大切なことが多くあります。


その1
生きているものを見るべし。

淡水プランクトンの図鑑や観察入門書などには,「採集した試料は直ちにホルマリンなどで固定するように」と書かれてあります。理由は以下のとおりです。
  1. 固定しないと試料が腐敗する。
  2. 固定した試料は後からでも研究することができる。
  3. 生物が動かず,捕食活動なども行わないため,数を正確に数えることができ,定量研究ができる。
しかし,これらはあまりにも専門家的な理由です。まず1の腐敗問題ですが,これは遠方へ採集旅行に行って,すぐに顕微鏡観察できない場合に問題になるのであって,近くの池から採集してきてすぐに顕微鏡観察するような場合にはほとんど問題にはなりません。暑い夏なら試料は1日くらいしかもちませんが,それ以外の季節なら2〜3日は十分もちます。2および3の理由も,本格的な研究でなく,単に「池にいる小さな生物を観察する」だけならほとんど関係ないと思います。それよりも,固定した試料は,初心者の観察の際にはかなりの問題になることがいくつかあります。
  1. 生物が死んでしまっているので,同定の際の重要なヒントである「動き」が全く観察できない。
  2. 固定により収縮,変形してしまい,何なのかわかりにくくなるものが多くある。
  3. 固定することにより著しい変形や分解をしてしまい,全く観察できなくなるものが多くある。
  4. 固定することにより,変色するものが多くある。
実際,固定した試料においての同定は,一部の例外を除くと,生きたものでの同定よりはるかに難しいです。それに,固定した試料ばかり見ていては,本当の生物の姿を理解することはできません。思いがけない間違った印象を持つ可能性もあります。したがって,初心者は,生きた生物で名前を調べたり観察をしたりすべきであると私は強く主張するものです。固定した試料での同定は,よほど慣れてからでないと行うべきではないと私は思います。もちろん,採集した試料の一部を固定して保存しておくのは有意義なことで,できればぜひ行っていただきたいと思います。ただし,一般の家庭で研究,観察を行う場合は,ホルマリンやホルマリンを含んだ固定液は絶対使ってはいけません。ホルマリンはホルムアルデヒドの水溶液で,ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の主な原因物質だからです。アルコールを使ってください。

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その2
動きを見るべし。

形が似ている生物同士でも,生物の動きの有無,動きの違いで簡単に見分けがつくものが結構多くあります。動くものはどんなふうに動くのか,なるべく詳しく観察し,記録しておくと,名前を調べるのに重要なヒントが見つかることが多いです。ただし,その際注意すべきことが2つあります。
  1. 本来動く生物でも,死んでしまっていたり,弱っていたりすると動きません。また,何かにはさまっていたり,カバーガラスに押し付けられていたりすると動けない場合が多くあります。
  2. 本来動かない生物でも,顕微鏡下で水が動いたりすると,それに伴って動いてしまうことがあります。また,近くに動く生物がいると,それによって動かされてしまうこともあります。

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その3
いろいろな方向から見るべし。

淡水の小さな生物の中には,見る方向によって全く形が違って見えるものが多くあります。一方向から見ただけでは何だか全くわからなくても,別の方向から見るとすぐにわかったりするものも結構ありますし,一方向から見ただけでは他の生物とうっかり間違えてしまうものも多くあります。カバーガラスを動かしてみたり,他に違った方向から見えるものがないかどうか探すなどして見ましょう。

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その4
大きさや色を見るべし。

淡水の小さな生物の中には,形が似ていても,大きさや色(特に葉緑体の色)が違っていて,大きさや色で簡単に見分けることができるものがよくあります。何なのかよくわからなかったり,ほかのものとの区別に自信がなかったりする場合には,大きさや色を忘れずに記録しておきましょう。

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その5
ピントをいろいろ変えて見るべし。

高倍率になればなるほど,生物全体にはピントが合いません。ピントをいろいろ変えてみると,それまで見えなかったところが見えてきて,名前を調べるための重要なヒントが見えてくるということがよくあります。

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その6
図鑑の図どおりに見えると思うことなかれ。

図鑑にのっている図は,同定に重要なところを重点的に描いており,重要でないところは簡単に書かれたり,省略されたりすることが普通です。したがって,図に描かれている線が実際にはよく見えなかったり,実際には目立つところが図に描かれていなかったりすることはしばしばあります。また,同じ種でもいろいろ個体変化がありますが,そこまではいちいち図示できないのが普通です。なお,写真図鑑でも,ピント,照明,撮影装置などいろいろかねあいがありますし,個体変化もあります。やはり図のとおりには見えないと思ったほうがよいでしょう。

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その7
図鑑に載っているものに強引に当てはめることなかれ。

図鑑は完璧ではありません。そして,あなたの観察力も失礼ながら,完璧ではありません。小さな図鑑はもちろんですが,大きな図鑑でも全部の種が載っているわけではありません。ほんの一部の種が載っているだけと見るべきです。しかも,まだ名前のついていないものも多いです。さらに,図鑑の記述に間違いがあることも結構ありますし,研究の進展によって,今まで正しいと思われてきたことが実は違っていたことがわかった,などということもしょちゅうです。「今見ている生物は図鑑に載っている種Aと似ている,でも少し違う。これはきっと今見ている生物のほうが間違っている(?)んだ。だから,今見ている生物は種Aだ。」これは大間違い。間違っているのはあなた自身か,図鑑の記述かどちらかです。似ているからといって少々の違いを無視して強引に図鑑に載っている種に当てはめてはなりません。真実はあくまでもあなたが見ている生物にあるのです。実はこれ,往々にしてやりがちで,私もおそらくしょっちゅうやらかしているはずです。一見その6と正反対のことを言っているようにみえます。無視していい違いと無視してはいけない違いを区別するのは,残念ながらむずかしいです。これは経験を積むしかありません。

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その8
無理して決めることなかれ。

淡水の小さな生物の観察では,必ず何だかわからないものが出てきます。また,どっちなのかわからないものも必ず出てきます。初心者であればあるほど,そのようなわからないものは多いと思います。しかし,決してがっかりすることはありません。わからなくて当たり前なんです。もちろん私だってわからないものはいっぱいあります。特に,種レベルでの同定はものすごく難しいものが多く,専門家でさえわからないものが結構あります。なお,専門家といっても,淡水の小さな生物全部に通じているわけではなく,専門は細分化されています。例えば,ワムシの専門家なら,ワムシについては詳しくても,珪藻など他の生物についてはシロウト同然(時にはシロウト以下)である場合がほとんどです。全ての生物に通じた人がもしいるならぜひお目にかかりたいものです。「○○大学」とか「○○博物館」といったところが制作したサイトでも,制作した人の専門分野の生物についてはまず間違いはないのですが(うっかりミスは除く),専門外の生物については「えっ!?こんなところで間違うのか!?」というような大間違いも結構見られます(もちろん私のサイトもおそらく間違いだらけ)。したがって,初心者がわからないものがいっぱいあるのは当然。わからないものは無理して決めずにわからないままにしておきましょう。その際は,スケッチや写真,さらには動きなどの記録をとっておくことをお勧めします。あとで「あれだったのか」とわかる場合が結構あります。

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その9
習うより慣れろ。

よく言われる言葉ですが,数多くの経験を積むこと,これは淡水の小さな生物の観察にも当てはまります。名前がわかるようになる一番の方法は,数多く見ることです。へたな説明文を読むより,「見ればわかる」というものが結構あります。最初はほとんどのものがわからなくても,数多く見れば見るほど不思議と何なのかすぐわかるようになってくるものです。

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その10
分布は気にする必要なし。

生物のなかにはごく限られた地域にしか分布しないものが数多くあります。たとえば,チョウセンアカシジミ(シジミチョウの1種)は,日本では岩手,山形,新潟県下のごく限られた地域のみ,アユモドキ(ドジョウの1種)は琵琶湖淀川水系および岡山県下の限られた水域のみ,ヒダカソウ(キンポウゲ科に含まれる高山植物)は,北海道日高山脈のアポイ岳のみといったように,例はいくらでもあげることができます。しかし,淡水の小さな生物はちょっと違います。図鑑をみると,しばしば「分布:島根県」とか「分布:東京都不忍池」とかいった記述がみられますが,これは島根県にしか分布しないわけでも,不忍池特産でもありません。ここで示されている分布とは,文献などで報告されているところや,図鑑の著者が自ら発見したところを記述してあるだけにすぎないからです。実際には大部分の淡水の小さな生物は,どこでみつかってもおかしくないものが大多数です。したがって,みつけた生物が,図鑑などを調べてこれに間違いないと思っても,みつけたところと図鑑に記された分布が違うと不安になりますが,心配する必要はまずありません。甲殻類(ミジンコ,ケンミジンコ類)などでは,南方系や北方系の種があるようですが,それでも関東以南とか北海道以北などのおおざっぱな範囲での話で,極めて限られた地域のみといったものではありません。ただ,例外として,琵琶湖特産あるいは日本では琵琶湖のみに発見されている種が数種あります。ほかにも限られた水域にしか分布しない種があるようですが,ほんの数種のようで,ほとんど気にすることはありません。しかし,狭い範囲で見ると,A池にはa種がいるが,b種は見つからず,B沼にはa種は見つからないがb種は多産するといったことがよくあります。特に甲殻類(ミジンコ,ケンミジンコ)によくあることのようです。このような狭い範囲での分布を調べるのもおもしろい研究テーマになるのではないかと思います。

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