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ワムシの咀嚼板


 ワムシには硬い被甲をもつグループと,もたないグループがあります。硬い被甲をもつグループは,その形で同定できるため比較的容易なのですが,もたないグループの同定はかなり困難です。特に固定したものは,体が収縮してしまうために一層困難になります。被甲をもたないグループの同定で最も重要なのは,体内にある咀嚼板(そしゃくばん)とよばれる器官の形で,これをみないと種の決定はもちろん,科レベルの決定すらできないことがあります。カシラワムシの仲間がよい例で,ここにはいろいろな科に属するものが入るのですが,どの科に入るのかは咀嚼板を見なければなりません。したがって,初めてワムシを観察する人には残念ながらどの科に入るのかもわからない,ということになるのですが,それじゃ不満,という人のために,ちょっとだけ咀嚼板のことを記しておきます。
 咀嚼板はふつう頭部のやや下の中央部にあります。ワムシは体が透明で,外から体内の内臓等の諸器官が見える場合が多く,おおよその形がわかり,属レベルの同定くらいは何とかなる場合もあります。しかし,外から見えにくい場合や全く見えない場合もありますし,細かい形態までは外から見ただけではわかりません。下の写真(ツボワムシ)の赤矢印が咀嚼板で,存在ははっきりわかりますが,細かい形態までは体の外からは観察できません。
ツボワムシ

 咀嚼板をはっきり観察するためには,アルカリ処理という操作が必要になります。ワムシの入った試料をスライドガラスに落とし,それに水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの薄い溶液(5%くらいでよい)を1滴落としてカバーガラスをかけ,顕微鏡で観察してみてください。するとアラ不思議,ワムシの体がみるみる溶けていって,最後に咀嚼板と(もっている場合は)被甲だけが残ります。いままで観察しにくかった咀嚼板の形がはっきりわかるようになります。しかし,これらの薬品は大変危険な劇薬です。もしやってみようという人は,必ず理科の先生の指導の下に,皮膚や目につかないよう,十分注意して試みるようにしてください。水酸化カリウムなどがない場合には,珪藻殻のクリーニングでも登場するパイプユニッシュで代用できますが,これも取り扱いには十分注意してください。また,フクロワムシなど,被甲を持たないものは体が跡形もなく溶けてしまって,咀嚼板しか残りません。特にフクロワムシの中には図体がでかい割には咀嚼板が小さいものがあり,へたすると見失ってしまいますので注意が必要です。

 下にいくつかのワムシの咀嚼板を示します。倍率は同じではありません。カシラワムシの仲間でとりあげたカシラワムシ属(Cephalodella)とテングワムシ属(Dicranophorus)は属する科も違うのですが,全体の形からは両者を見分けるのが困難です。しかし,A,Bからわかるように,咀嚼板の形ははっきり違っています。種レベルでの同定に咀嚼板の形態が不可欠のものも多いのですが,C,Dのフクロワムシ属(Asplanchna)などは,咀嚼板の形が種レベルでもかなり異なっていて,種の同定がやりやすい例です。しかし,Aのカシラワムシ属(Cephalodella)など,種レベルでの違いがごくわずかで,種の分類は難しいものも多くあります。これらの種の同定にはきちんとした咀嚼板の標本を作り,少なくとも1000倍以上の倍率で細かい形態まで観察しなければなりませんが,具体的なやり方は私もよく知らないので,これ以上のことは省略します。

カシラワムシの1種 Cephalodella sp. テングワムシの1種 Dicranophorus sp.
A:カシラワムシ
Cephalodella sp.
B:テングワムシ
Dicranophorus sp.

フクロワムシ Asplanchna priodonta シーボルトフクロワムシ Asplanchna sieboldi
C:フクロワムシ
Asplanchna priodonta
D:シーボルトフクロワムシ
Asplanchna sieboldi

ハネウデワムシ Polyarthra vulgaris ツボワムシ Brachionus calyciflorus
E:ハネウデワムシ
Polyarthra vulgaris
F:ツボワムシ
Brachionus calyciflorus

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